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本日は、連載企画の第3弾“HISTORY OF WAKOUWA EPISODE Ⅲ”より「~開発~編」を掲載します。
5回の連載の中でもかなり文章が長くなっていますが、その分、最も大事な部分になります。
この回をお読みになってから店頭にいらっしゃるのと、そうでないのとでは”WAKOUWA”の見え方が全く変わってくるかとさえ思います。
是非、ゆっくりご熟読下さい!
まず、WAKOUWAを制作する上で最も時間を費やしたのがこの木型(LAST)の作成です。
SPECIAL LAST FOR WAKOUWA (実物)
ANATOMICAの“SCIENTIFIC SHOE FITTING”をご存知の方なら容易に理解できそうですが、このWAKOUWAにもALDENのモディファイドラストやEdward Lyman Munsonの唱えたオーソペディックシューズ特有の「アシンメトリックなインサイドストレート・アウトカーブ」の形状を、スニーカーながらに採用しています。
特徴ある深いくぼみ
「土踏まず」をがっちり固定し、トゥ部分には「捨て寸」を採用
「足が擦れて痛い」なんてことのない、まさにストレス・フリーな履き心地
寺本とピエールがWAKOUWAの木型を作成するにあたって、参考にした文献があります。
それは、1912年にEdward Lyman Munson博士が書き上げた“The Soldier’s Foot and the Military Shoe”
彼はワシントンの陸軍学校の軍隊衛生学の教授として就任していた際、歩兵部隊のブーツを開発します。
4年という歳月をかけ、約2000人もの兵士の足を調べ、数千足の靴のフィッティングについて研究し、彼らのための理想的なシューズの木型を完成させたのです。
その木型は「マンソン・ラスト」と呼ばれ、陸軍のサービスシューズに採用、現在でも一部のミリタリーブーツ等に使用されています。
彼はこの著書の中で、マンソン・ラストは足の指先に沿うように、つま先の中心から親指にかけて大きく膨らんだユニークな形状となっており、これによって足先を強く締め付けることがなくなるため、外反母趾やハンマートゥといった足のトラブルが起こりにくいと説きました。
悪いシューズを履いた兵士の足は、こうなってしまう
『WAKOUWAがなぜ履きやすいか。』
その答えは、WAKOUWAの色々な箇所に散りばめられていますが、大きな核となる「木型(ラスト)」こそ、最も重要かつ目に見えない工夫が施されているポイントかと思います。
ファーストサンプルから11回の木型作成。この時点で1年7か月の月日が流れていました。
寺本が何度サンプルを作っても、ANATOMICA PARIS・ピエールが納得しなかったのです。
試行錯誤の末、ようやく完成したWAKOUWAのための特別な木型は、土踏まずの部分が極端にくびれた形状を持ち、つま先部分は捨て寸を採用しゆったりと、それ以外の部分はまるで自分の足に合わせて作られたかのようなフィット感から、快適な履き心地を生み出します。
そこからは理想の完成形を目指すべく、さらに「実物サンプルの作成→ピエールのチェック」を繰り返します。
できたサンプルをパリ店のピエールに送り、修正箇所が書かれた付箋が大量に貼られて返ってくる(写真は当時の実物)
気の遠くなるようなこの作業を何度となく繰り返したそう、、、
そもそも、なぜ寺本とピエールは、アメリカ生まれのスニーカーを日本の工場で作ろうと思ったのか?(現在は台湾製)
それは、日本に古き良き“ヴァルカナイズド製法”を可能とする工場が存在するからでした。
いわゆる“ヴィンテージ“と呼ばれるものはすべてこの製法によって作られ、スニーカー発祥の起源とされる製法です。
その工場は、木型からパターン等、製造に至るまでのすべてを一貫して行えるシステムが整っており、ラストの修正はもちろん、足回りのゴムテープの巻き幅、アイレットの間隔等、細部にまでこだわったコンマ何mmの修正にも対応できたのです。
ヴァルカナイズド製法の加硫釜
また、アッパーに使用される10.1オンスのミルスペックキャンバス素材は、1940年代L.L.Beanのトートバッグに使用されていたアメリカの“DANDUX(ダンダックス)社製”のものを使用しており、今現在ではこの生地メーカーのみが作っている素材です。
さらに、アッパー・ライニング・インソールそれぞれのキャンバスのオンスを変えることで伸縮率が異なり、馴染んだ時のフィット感や雰囲気も考慮しているほどのこだわりよう。もちろんシューレースもコットン100%です。
インソールにはクッション性の高いドイツ製のラテックスソールを使用。木型のこだわりはもちろん、抜群のクッション性も兼ね備え、スムーズな足運びを実現します。
また、WAKOUWAが梱包される靴箱はANATOMICA PARIS・東京・札幌の店舗内装、さらにはWAKOUWAのパターン・デザイン画の作成も務めたバスク人建築家・ルイスのハンドスケッチによるもの。
長々と書き綴ってきましたが、いかがでしたでしょうか?
最後まで熟読頂けた方は、もうすでにWAKOUWAの虜になって頂けているはずです。
次週は【EPISODE Ⅳ~誕生~】と題しまして、“WAKOUWA BOAT SHOES”のカラーバリエーションと特徴をご紹介します。
ご期待下さい!
ANATOMICA TOKYO 高桑